(一万ヒット記念作品)

 注意!

  オリ主と原作キャラの恋愛が無理と言う方は戻るをクリック推奨です。






 覚悟と苦いコーヒーの準備ができているなら↓へ。





























































 師匠と恋人、ふふっ何かはっきり言葉にすると恥ずかしいなあ!
 ……まあそんな関係になった訳だよ。取り立てて騒ぐ事ではないな。

 そしてそれから一ヵ月、俺は一人でギルドまで来ていたのだよ。

「クーデリアさん、おはようございます!」
「あ、はい。お、おはようございまス」

 やたらとカチコチになって敬語で挨拶をしてくるクーデリアさん。これを見るのがやめられない。
 師匠と報告に来たら一瞬でフリーズして、解凍以来俺を見る度にこんな調子だ。
 未だに怪しんでいるのか偶に仕事をサボってアトリエに顔を出している。

「いやはや、人生ってものは驚きの連続ですね」

 斜め45度の角度で顔を上げ、口元を上げる、下々の言葉で言うところのドヤ顔を決めた。

「その顔やめなさいよ。くっ、なんでロロナとこんな奴が……」

 未だに信じられないなんて可哀想なクーデリアさん。
 ここは俺の誠実な思いを言葉にしてぶつけるしかないな。

「愛ゆえに!」
「苦しんで死ね」

 おおよそ人間に向けられる物とは思えないような視線を向けられた。
 言葉にも一切の遊びを感じない。何と言うか、ストレートに全てが伝わってくる。

「まあ、今日はちょっと相談に来たんですよ」
「この流れで私が聞くと思うのかしら?」

 何と言う慈悲のなさ、これが愛に嫉妬する者の姿か。

「じつは師匠とのことで……」
「別れるのね!」
「うんうん」

 人って他人の不幸をこんなに喜べるものなんだなって、そんな事を知って思わず頷いてしまった。

「は? 本当にそうなの? あの子の何が悪いのよ、死にたいの?」

 何と言う理不尽の女王様なんだ。
 オラもうちょっと(頭の)強ええ奴と話してえ。

「とりあえず話してもいいですか?」
「許可するわ」

 帰ったら師匠と話して癒されよう。そうしよう。


…………
……


「……ふう」

 ティーカップを片手に、左手で本を持って、優雅な読書タイムをエンジョイしている。
 人生が豊かになると心も豊かになると言うべきか、なんだか最近は借金とかどうでもよくなってきてしまった。

 人生をバラ色にする方法? 大切なものが一つあれば十分さ。

「はい、おかわりどうぞ」
「おお、以心伝心」

 空のカップを置くと向かい側の師匠がすかさず注ぎ直してくれた。
 なんという気のきき方。恋人にしたい女性ベスト3に入るぜ。

 まあ俺の彼女なんですけどね? これぞ人生のウィナーグループ。
 何と言うか世の中の男性方に申し訳が立ちませんな、グフフ。

「トトリちゃんもそう思うだろ?」

 幸せ味の紅茶を一口、気分が収まらぬままに横に座っているトトリちゃんに同意を求めた。

「あ、は、はい。そうですね」
「ん? どうしたんだ? 具合でも悪いのか?」
「あ、いえ違うんですけど……」

 なんだが居づらそうに視線を彷徨わせている。
 さっきから本を呼んでいるのも上の空だと思っていたが、何かあったんだろうか?

「とりあえず紅茶でも飲んで落ち着きなさいな」

 空のカップにさっきの俺が入れてもらった分の余りを入れようと、トトリちゃんの顔色をうかがいつつポットに手を伸ばした。

「はうっ」
「んにゃ?」

 陶磁器特有の摩擦のないツルツルした感触……ではなく、人肌の柔らかさがそこにあった。
 顔を向けると師匠の手の上に俺の手が、何これデジャヴ?

「え、えっと、その、わ、わわわたしが淹れようと思ってね……」
「あ、ああ……」

 以前とは打って変わって顔を真っ赤にして噛み噛みで事情を説明してくる師匠。
 つられて俺も自分の顔が火照るのを感じてしまう。

「え、えへへ……」
「は、はは……」

 互いに思わず笑ってしまう、気まずいと言うよりはこそばゆい感情の方が強い。
 ただ、そんな状況になっても重なった手は離れなくて。

「や、やっぱりわたしお邪魔でしたよね!」
「へ?」

 突然横でトトリちゃんが立ち上がった。
 そして半泣きになりながら一瞬にして外へと出て行ってしまった。

「気、使わせちゃったのかな?」
「たぶん……」

 よくよく考えてみれば先生と先輩が横でイチャつき始めるって相当な拷問だったな。
 今度好きな食べ物でも買ってあげるとしよう。

「えっと…………」
「…………」

 気を使われたもののどうしていいか分からず、俺も師匠も俯いてしまった。
 ここは男らしく俺からアクションを起こすしかないようだ。

「…………」
「…………」

 と思ったが男尊女卑とかこの時代流行らないよな。
 ここは師匠の出方を伺ってからでも遅くはな――――。


 ヘタレていたら師匠が本当にアクションを起こしてきた。
 こう、ポットの上の手を掴まれてテーブルの上に置かれた。

 そして師匠の両手が俺の右手に乗っかった。師匠が恐る恐ると言った様子で下を向いたまま俺の事を上目遣いで見ている。
 この瞬間、死んでも俺は、本望だ。

「ふむ……」

 俺の左手も乗っけてみた。すると自然と互いの顔が上がって目が合っちゃった。
 師匠は自然な笑みを浮かべていて、俺も意識せずに口角が曲がった。


…………
……


 そして見つめあったまま体感二時間が過ぎ去った。

 これってこの後何したら良いの?
 漫画とか小説だと、手をこんな感じで握りあった後って『まるで磁石のように二人の顔の距離は近づいていった』みたいな事になってるけど。
 もしやラブが足りないのか、愛情、それが二人の溝だとでも言うのか……。

 否!

 師匠は未だ笑顔だが、きっと何もなさ過ぎて内心では俺の愛に疑問を持っているのではないか。
 よく考えて、よく考えて行動しよう。

 その一、手が汗ばんできただと言って立ち上がり洗面所へ
 その二、「ごめんトイレ!」逃走する。
 その三、むしろ漏らして師匠を撃退する。

 なんだこれ。

「師匠、愛してるぜ」
「え、う、うん!」

 手を軽く握りしめて考えられる中で一番キザな声色でそう告げた。
 うん、シンプルイズベスト。

 そして俺は極めて自然な流れで師匠の手をこちらに寄せていき、俺も体を近づけて行く。

「あ、あう……」

 徐々に、徐々に距離は近づいて行き……そして。

「ロロナー! 遊びに来たわよー!」

 積み上げてきた全てをぶち壊された。






「こっから先はあなたも知ってのとおりですよ。そのままクーデリアさんが連れ出しちゃってねえ? これが一回だけならいいんですけどねえ? ねえ?」
「…………」

 クーデリアさんは真顔で俺の方を見ている。
 あくまでシラを切ろうっていう腹ですか、そうですか。

「相談って言うのは、あなたのことですよ! クーデリアさん!」

 ズビシッ! という効果音が付きそうなほど堂々とクーデリアさんに右手を突きつけた。

「…………」
「ん?」
「…………」

 おかしい、クーデリアさんのアクションがここまでないのは流石におかしい。

 いつもなら、鼻で笑うくらいはするはずなのに……。

「クーデリアさん? くーちゃーん」
「…………」

 禁忌の呼び名にも全く反応しない。

「ちょっと……――――っ!?」

 目の前で手をぶんぶんと振って、そこで気づいた。

「き、気絶している……だとっ!!」

 そう、クーデリア・フォン・フォイエルバッハは目を開けたまま気を失っていたのだっ!
 主観的に語られる幼馴染の生々しい話っ!
 彼女の精神は耐えられなかった。故に選んだのだ! 気絶と言う逃避の道をっ!

「えーと、フィリーちゃーん」

 放っておくのも忍びないので、横にスライドしてフィリーちゃんの前まで来た。

「……ぶつぶつ……三角関係。……ぐふふ……うへへ」
「サヨナラ」

 一目散に外目がけて走りだした。

 おおよそ女の子にあるまじき笑い方をしながら紙に何かを書き殴っていた。
 正直に言おう、凄く怖かった。

 






 そしてギルドを出るとちょうど昼だったので、俺は師匠との待ち合わせをしているサンライズ食堂に向かった。

「イクセルさーん、師匠来てますか?」
「ん? おう、来てるぜ」

 イクセルさんが指差す方向、壁の方の二人席に師匠が座っていた。
 俺はすぐさま師匠の下へ駆け寄った。

「アカネ君、遅い!」
「悪い悪い、時間の無駄があってさ」
「……?」

 口を半開きにして疑問符を浮かべる師匠。
 あなたの幼馴染といろいろ話し合ってたぜ、なんて流石に言えはしない。

 席について、とりあえずコーヒーを頼もうとイクセルさんを呼ぼうとした。

「しっかしお前らがなあ、なあなあ付き合ってるって本当なのか?」

 呼ぶまでもなくイクセルさんが野次馬根性全開で近寄ってきた。注文を取ってほしいです。

「っていうかなんで知ってるんですか? 師匠が話したとか?」
「え? わたしイクセ君にはまだ話してないよ?」
「ん? なんだ、お前ら知らないのか?」

 そう言うとイクセルさんはカウンターの方に一旦引っこんで紙を持って戻ってきた。

「これこれ、昨日から街中で配ってるぜ」
「ふむ、何々………………ホワイ?」

 俗に言う号外、内容を一言でまとめるなら『熱愛発覚』付け加えるなら師弟で。

 本当にアーランドの人たちはこういう話が好きなんだから……新聞社にフラムでも投げつけようかな。

「たぶんこの街で知らない奴はもういないと思うぜ?」

 その言葉を聞いて脳内に図式が浮かんだ。

 ジーノ○、ミミ○、メルヴィア○、マーク○、ステルク●。

 あの人騎士中毒だからなあ、本当に君は彼女を守れるか的な事を言って果たし合いとかされそう。

「過ぎた事は変わらないのでとりあえずコーヒーをお願いします」
「あ、わたしも」
「はいよ」

 しばらくアトリエに籠りつつ逃げながら生活するとしよう。
 先行きに不安を感じつつ師匠と談笑すること数分、イクセルさんから声がかかった。

「ロロナー! 忙しいから自分で持ってってくれー!」
「うん、分かったー。わたしが持ってくるからアカネ君は待っててね」
「あいよ」

 イクセルさんには客にやらせるなとか、俺を指定してくれとか色々突っ込みたい。
 師匠も師匠で素直に取りに行っちゃうし。

「……ふう」

 ぼうっとしていると、一個前の二人席もカップルで座っているのが見えた。
 彼女の方が水が入っているグラスを彼氏の頬にくっつけてイチャイチャしている。

 この二十年で見に着いた悲しい性から、無意識でリア充は爆発しろとか思ってしまった。
 師匠も積極的にああいう感じの事をしてくれたらうれしいんだけどな…………――――。




 ――――耳元で肉の焼ける音がした。




「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!?」
「ひゃあ!?」

 脊髄反射的にテーブルのお冷を首にぶっかけた。
 そして後ろでわたわたしている師匠を発見した。

「あんたはアホか!? 何を思ってコーヒーだよ! もっと色々あるだろうが!」
「だ、だって、アカネ君が羨ましそうに見てたから……」
「それは淹れたてHOT! コーンポタージュ顔にぶちまけるぞ!」
「うう、アカネ君が怖い……」
「くっ」

 涙目になる師匠、女の涙は武器とかテラワロス、そう思ってた時期が僕にもありました。
 ダメだわ。うん、これ以上怒れない。

「…………」

 そこで俺の頭の電球が光った。
 カップを持ったまましょんぼりと項垂れている師匠に声をかける。

「……昼ご飯をあーんで食べさせてくれたら許さない事もない」
「え、ええ!? そ、それはちょっと……」
「首がイタイナー」
「うう……意地悪だ……」

 再び半泣きになる師匠、この涙はどっちかと言うと嗜虐的な感情を増幅させるな。

「イクセルさん! オムライス二つ!」
「あいよー、お前ら大概にしとけよー」

 呆れ交じりの声でイクセルさんは注文を受け入れた。




「あ、あーん」
「ククッ、あーん」

 スプーンで差し出されるオムライスを俺は顔を前に出してパクリと食べた。
 グレイトだ。羞恥で赤く顔を染めてスプーンを差し出す師匠がなんともグッドだ。

「は、恥ずかしい……」
「ししょ…………ロロナさーん、次をお願いしたいなー」
「あ、アカネ君嫌い……」
「ハッハッハ」

 なんとも耳にこそばゆいではないか、次が来そうにないしそれじゃあ俺も一つ。

「ロロナさん、はいあーん」
「むう、バカにして……あーん」

 年上としての威厳を思い出したのか、覚悟を決めた表情でどことなく不満そうにオムライスを頬張った。

「…………」

 本能的にそのスプーンを使い自分で食べた。

「あ、あう……」
「いや、俺はロロナさんが不満そうだったから自分で食べただけだぜ?」

 別に他意はない。そう、他意はない。

「意地悪」
「知ってる、嫌か?」
「ううん、アカネ君がそういう子なのは知ってるもん」
「ありがたいな」

 互いに少し笑って、俺は切り取った一欠片をまた師匠の方に向けた。
 師匠もあまり抵抗はなさそうに食べようとして――――。



「君たちは一体何をしているのかね……?」
「あっ」



 そこには信じられない物を見るような目をしているステルクさんがいた。
 この先あった事はまあ、別の話だ。


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