(五万ヒット記念作品)

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 勢い任せな告白の数週間後、俺はぷにとアーランドのアトリエでソファに座りながらまったりしていた。

「最近になってやっと落ち着いて来たよな」
「ぷに」

 告白して受け入れてもらって、大喜びをしていたのも束の間。
 ピアニャちゃんからヘルモルト家の長女と父にその事が伝わってしまった……。

「グイードさんが何より怖かった」
「ぷに〜」

 第一声が『おい、アカネ』だよ、その後二人で話すことになったし思い出しただけで胃が痛い。
 まあトトリちゃんとの仲は認めてもらったから言う事はないんだけどな。

「師匠は割とあっさり受け入れてくれて助かったぜ」
「ぷに」

 あの時の口を開けて驚いていた顔は未だに印象深く残っている。

「今更だけど俺って超勝ち組だよな。この世のすべてを手に入れている気すらする」
「ぷに……」

 ぷには何言ってんだこいつみたいな目をしているが、まあ今のお前には分かるまい。

「ふふん」

 そんな意味を含めて鼻で笑うと、ぷにの眉がつり上がった気がした。
 反撃が来るかと身構えたところで、突然アトリエの扉が大きく開かれた。

「い、いらっしゃい?」
「…………」

 そこには仁王立ちするミミちゃんの姿が、なんだろう何か怒っているような雰囲気すら感じる。

「…………」
「ひっ」

 帝国のテーマでも流れてきそうなゆっくりとした歩調で、俺の方にゆっくりと近づいて来た。
 思わず声を上げてしまった俺は悪くないと思う。

 まさかこやつ俺とトトリちゃんの事を聞きつけて文句を言いに来たんじゃないだろうか、このツンデレならありえる。

「だが俺とトトリちゃんの仲を裂くことはできないぜ!」

 右人差し指を突きつけてそう宣言した瞬間、肩の上に何かが振り下ろされた。

「もう一度言ってもらえるかしら?」

 ニッコリと優しげな笑みを浮かべてそう言うミミちゃん。
 ツンデレがヤンデレに進化したんじゃないだろうな……。

「な、何が不満なんだよ、ですか」

 一瞬、矛が首筋に当たったんですけど。
 棍棒外交か、棍棒外交なのか?

「別に不満なんかないわよ、ただ一つあんたに言いたい事があるのよ」

 そう言ってミミちゃんは矛をしまってくれたのだが、その一つ言いたいことが絶対にロクでもない事だろうに。

「あんた、今の所持金言ってもらえるかしら?」
「うん? あーっと、五万は貯めてると思うけど……」
「へえ、プラスの数字なのね」
「あっ」

 なんとなくミミちゃんの言わんとすることが分かった。
 とすると、引く事の……。

「マイナス九十五万コールなり」
「はあ……」

 ミミちゃんは溜め息を一つ吐くと、テーブルの椅子を引っ張りこちらを向いて座った。

「あんた、ヒモって言葉くらい知ってるわよね」
「物を括ったり結びつけられたりする物一般の総称」
「括るわよ」
「あ、はい、すいません」

 あまりの迫力にどこを? なんて聞くことすらできなかった。

「とにかく、トトリがあんたを選んだのなら仕方ないから、あんたはそれ相応の努力をしなさいって言いに来たのよ」
「だ、だけどなあ……」
「考えてみなさい」

 俺の言葉を跳ね除け、ミミちゃんは俺の目を真っすぐに見つめて言葉をつづけた。

「ちょっとおいしい物を食べに行った日、支払いの時のトトリを」
「…………」

 トトリちゃんの事だから、わたしに任せてくださいとか言っちゃうんだろうなあ。

「あんたの事だから、トトリの言う事になんだかんだで逆らえないで受け入れちゃって」
「うぐっ」
「トトリが見つめるアクセサリーも買ってあげられない、そして次第にトトリの心はあんたから離れて……」
「俺、ぷにと頑張ります」
「ぷに!?」

 膝に乗っかっているぷにが抗議の声を上げているが知らん、お前の借金を手伝ったんだからいいじゃないか。
 所詮世の中は金、トトリちゃんは気にしないだろうが俺が気にするんだ。


 
 その日から俺は今までの倍働いた。
 トトリちゃんと一緒に出かけることもできず、一緒にご飯も食べられず。
 アトリエでもあまりの忙しさにあまり会話もできず、日々調合の毎日。


 そしてそんな生活が一ヵ月余り続いた日の事。

「ぐーる、ぐーるっと、っふぁ〜」

 欠伸をしながら右手で釜をかき混ぜる、とりあえず二十万くらい集めたら一休みしようという目標を立てたがやはりきつい。
 トトリちゃんの誘いを依頼の期日のせいで断らなくちゃいけない時がなによりきつい。
 正直、あの時の寂しそうな顔をみるくらいなら金稼ぎなんかやめてやると何度思った事か。

 まあ、これもよりよい未来のため。
 そんな事を考えていると、ふと左から袖を引っ張られた。

「アカネさん、聞いてましたか?」
「え、あ、もちろんさ」

 トトリちゃんが非難するような目で俺を見ている。
 寝ぼけた頭で考え事してたせいでまったく聞いてなかった。というよりも隣にいたことすら気付かなかった。

「それで、良いんですか?」
「お、おう。もちろんさ」
「むう、そうですか、分かりました!」
「え、あれ?」

 トトリちゃんは眉を吊り上げ、声を張り上げて出て行ってしまった。

「どゆこと?」

 ソファに座る師匠を見ると、なんだが呆れたような顔をしていた。

「アカネ君、忙しいのはわかるけどちゃんと構ってあげないとダメだよ?」
「は、はあ……」

 俺は一体何を聞かれたのか、それは夜、宿屋に帰るまではまったく見当もつかなかった。














「はあ、今日も疲れたっと」
「ぷに〜」

 ぷにを引き連れ宿の部屋へと帰還。
 肩も凝ったし今日は筋トレは休んで寝てしまおうと、布団を持ち上げて俺は固まった。

「…………」

 そこにはすやすやと寝息を立てて丸まっているトトリちゃんの姿が、疲れすぎて幻覚を見てるとかじゃない、絶対にない。
 いつもの服だが、頭の飾りがないからかいつもと印象が違うなあ。

「いや、そうじゃなくて……」

 それにしても、布団を持ち上げた瞬間から部屋中の空気が一変した気がする。

「柔らかなシャンプーの香りが……同じの俺が使っても絶対こうならないって」
「ぷに……?」
「あ、ああそうだな。まずこの現状を――っ!?」

 神の如き速さで俺は首を上に振り上げた。
 危ない、体勢のせいでトトリちゃんが危ない。主に太ももとか。

「とにかく起こそう、そうしよう」

 上を向いたまま、ベッドに近寄り。
 下を向いて、トトリちゃんの肩を静かに揺すった。

「……ん、あれ?」

 薄くまぶたを持ち上げたトトリちゃん。
 すぐに違和感に気付いたようで、目を見開いてバッと起き上った。

「あ、アカネさん。えっと、これはですね……」
「ああ、うん」

 なんだろう、俺はここでどう答えるのが一番いいのだろう。

「と、とりあえず帰った方が良いな。話は明日聞くから」
「嫌です」

 目を見てはっきりと断られた。

「な、何故ですか?」
「アカネさん昼間に、今日泊まりに行っていいですかって聞いたら、もちろんって言ったじゃないですか」
「なっ!?」

 あの問いはそういう事だったのか……。
 そりゃ怒るよな、あんな上の空で答えちゃったんだし。

「もしかして怒ってる?」
「別に怒ってません、少し構われなかっただけで怒るほど子供じゃないですから」

 そっぽ向いてそう答えるトトリちゃん。明らかに怒っていらっしゃる。

「いや、最近忙しかったのはさ、こう……」
「言い訳なんて聞きたくないです」

 ダメだ、完全に拗ねている。
 俺が百パーセント悪い以上、無理に追い出そうとしたらますます拗ねるだろうし……。

「分かった。泊っても良いから着替えなさい」
「着替えですか?」
「うむ」

 俺は横にあるクローゼットを開き、中からハンガーに掛った黒いジャージを一着取りだした。

「そのままだと、体冷やすだろうしな」

 極めて紳士的にそう言う、根本的にもっと大変なことがあるのは口に出せない。

「ちょっとホットミルクでも持ってくるからその間に着替えてくださいな」
「あ、はい」

 少し申し訳なさそうな顔でそう言うトトリちゃん、無理に押しかけて悪いとか持っているのかもしれない。
 そういう顔をされると俺の方が困ってしまう……。

「あー、なんだ。ちょっと驚いたけど、別に迷惑とかじゃないとは言っておくからな」

 ちょっと照れ臭かったので、扉を閉めながらトトリちゃんの反応の一切をシャットアウトしてそう言った。
 微妙に顔が赤いのを感じてしまう。ついでに外に出て頭を冷やすとしよう。









 キッチンを使わせてもらい、カップに温めた牛乳を入れて部屋の前まで来た。
 ぷにの分を入れようとしたところでいつの間にか消えている事に気付いた。相変わらず空気を読む所は読む奴だ。

「トトリちゃん、入るぞー」

 一旦カップを置いてからノックをし、返事を確認して俺は扉を引いた。

「…………」
「? どうしたんですか?」

 ベッドに座るトトリちゃん、明らかに丈の余った黒いジャージ、手元がダブダブで実に可愛いのだが……。
 俺は再び神の如き速度で扉を閉めた。

「アカネさん、どうしたんですか?」
「上だけジャージなんて許しません!」

 何と言う事か、余りにも大きかったからか下を履いていなかった。
 そのせいで膝上少しまでがもろに見えていた。

「とにかくやり直しなさい」

 自分を戒めるために太ももをつねりながらそう言った。
 待つこと数分して、俺は再び扉を開けた。

「アカネさん、やっぱりちょっと大きすぎませんか?」
「それくらいでちょうどいいんです」

 いまやトトリちゃんの露出はゼロだ。
 ただそれでも可愛く見えるのは俺のひいき目だからだろうか?
 黒いジャージと言うのが意外とトトリちゃんに合っている。サイズがあってないのがさらに良い。

「トトリちゃんはアレだな。いつもの恰好意外だと髪飾りがない方が可愛いな」
「そ、そうですか?」
「うむ」

 何言ってんだ俺と思わなくもないが、トトリちゃんの照れた顔が見れたので良しとしよう。

「とりあえずはいよ」
「あ、ありがとうございます」

 袖口から指先だけでた手でカップを受け取るトトリちゃん、少し熱かったのか息で冷ましてから口をつけた。
 いつもの恰好と違うからか、一つ一つの動作が妙に新鮮に思えてしまい思わず見つめてしまう。

 意識を別に向けようとトトリちゃんの横に座り、俺もカップに口をつけた。
 少しの間、互いに無言になったがそれはどちらかと言うと気まずいと言うよりも、むしろ心地よくさえ感じた。

「アカネさんは……」

 トトリちゃんが沈黙を破り、口を開いた。

「アカネさんは、わたしの事好き……なんですよね」
「お、おうともさ」

 上目遣いで直球でそう聞いてくるトトリちゃんから思わず顔をそむけてそう答えた。

「こっち見てくれないんですか?」
「い、いや、年上の威厳とかがあってな……」

 単純に言って顔が真っ赤なんですよ。

「でもアカネさん、耳まで真っ赤ですよ?」
「クッ」

 観念してトトリちゃんの方を見ると、少し俯いたトトリちゃんの顔もまた赤に染まっていた。

「あ、あんまり見ないでください……」
「こっち向いてくださいって言ったのはトトリちゃんだからなあ」

 鬼の首でも取ったかのようにそう言葉にすると、トトリちゃんは少し顔をこっちに向けて口を開いた。

「あの、どうして、好き……なんですか?」
「あー…………」

 確かにどうしてだろうな。好きになるならどのタイミングでもありえた訳だし。
 親愛の情が別に変ったのはやっぱりあの日だ。その時の事を強いて言葉にするなら……。

「……ずっと一緒にいたいって思ったからだな」
「そ、そうですか……」
「トトリちゃんはどうなんだ?」
「あ、えっと、その……」

 完全に俯いたトトリちゃんは、恥ずかしさが限界まで来てしまったのか、テーブルにカップを置いて布団を被ってしまった。
 俺も俺で臨界点が近いから助かったと言えば助かったが、いきなりそれはないんじゃないか?

「ところで俺はどうすれば良いんだ?」

 まさか床で寝ろと?
 そう思ったところで、ベッドの隅が持ち上げられた。

「ど、どうぞ……」

 顎にアッパーカットを喰らった気がした。
 今日のトトリちゃんは全力で俺を殺しに来てる気がする。

 まさか俺の人生で添い寝をする日が来るとは、なんてくだらない事を考え雑念を排して俺は布団にもぐりこんだ。

「…………っ」

 甘い香りが俺の頭を揺さぶってきた。
 無心だ、とにかく無心にならなくては。

「わたしは……」

 一人で焦っていると、ふいにトトリちゃんが何かを語りかけてきた。

「わたしはアカネさんのことどうして好きなのか良く分からないですけど……」

 でも、そう言って息継ぎを一つして言葉をつづけた。

「アカネさんがわたしの事好きじゃなくなるのは嫌です。だから最近冷たくてちょっと怖かったんです」
「そうか」

 かなり無意識的に俺は腕を伸ばし、トトリちゃんの腰に手をやり後ろから抱きしめていた。
 そしてもう片方の手で髪を梳きながら口を開いた。

「そうかそうか、寂しかったんだな」
「そ、そんな子供みたいなあやし方しないでください」

 ちょっと拗ねた風に言うが特に抵抗などはされなかった。
 なんとなく無言になって、髪を梳くその感覚が妙に心地よくしだいに眠気が襲ってきた。
 眠りに落ちる一歩前、抱きしめる感覚にあの日を思い出したのか、自然と口から言葉が出た。

「また今度、星でも見に行くか」
「……はい」

 トトリちゃんのその短い返答を聞いて、ずっとこんな日が続くんだろうと、そんなこと思いながら俺は静かに眠りに落ちていった。




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