(十万ヒット記念作品)

 注意!

  オリ主と原作キャラの恋愛が無理と言う方は戻るをクリック推奨です。






 覚悟と苦い思い出の準備ができているなら↓へ。





























































 ある日のアーランドの昼下がり、俺は師匠のアトリエの中、テーブルに突っ伏していた。

「う〜」
「ぷに〜」

 未だに頭痛が痛い、それもこれもクーデリアさんが一時間もお説教するせいだ。

「くそう、クーデリアさんめ」
「うーん、たぶんアカネ君が悪いんだと思うけど……」

 弟子を信用しないとは、なんて薄情な師匠だろう。
 視線が語っている、たぶんじゃなくて明らかに俺が悪いと。

「俺は悪くないですヨー、ちょっと牛乳飲みながらクーデリアさんに話しかけただけなんでスー」

 飲み終わるまでは必死に耐えてくれてたけど、『牛乳飲めばぐんぐん育つ!』っていったところで弾丸が飛んできた。
 牛乳の感想言っただけなのにな。他意はなかった。

「アカネ君は本当にくーちゃん怒らせるの得意だね」
「ふふん」
「……褒めてないからね?」

 俺の不敵な笑みに、すっかり呆れた様子で師匠は溜め息をついた。
 でも毎回クーデリアさんの所に行くたびにネタを考える俺のこの姿勢は誇って良いものだと思う。

「ぷに……」

 とばっちり大賞のぷにことシロ君が何か言いたい様子だが、今日は翻訳アプリケーションがエラーを起こしている。
 きっと俺に賞賛の言葉を浴びせているのだろう。

「でも、なんでアカネ君ってそんなにくーちゃんにかまうの?」
「ん? そりゃあ……」

 からかいやすくて、ちゃんと怒ってくれる人だからかねえ。
 いじった後に泣いて逃げ出されると罪悪感のパラメータが跳ね上がるからな。

「ああっ! も、もしかして!」


 あ、これ絶対に解答間違ってる。


 そう思ったが俺には師匠の口から流れ出る言葉を止める術はなかった。

「だ、ダメだよアカネ君! そ、そのね! くーちゃんはちゃんと好きな人もいるし……」

 顔を真っ赤にして目をグルグル回して俺に詰め寄ってくる師匠。
 この人は思いついてから三秒で良いから、思考を省みてほしいな。

「そ、それに好きだからって悪戯するのは良くないと思うよ!」
「俺はガキか!」
「いたっ!?」

 反射的にテーブルに置いてあった本の面の方で師匠を叩いた。
 帽子越しに頭をさする師匠、あんまり強くなかったと思うけど涙目になってしまっている。

「まったく師匠は、誤解、いやまず勘違い、いやあっぱらぱーだ」
「あっぱらぱー!?」

 あ、さっきとは別の意味で涙目になってしまっている。

「俺がクーデリアさんにそういう想いを抱くなんて確立ゼロですよ」
「で、でもいつもの態度を見てると……」

 疑いの視線を向けてくる師匠、何故譲らないのだ。
 おーけー、仕方ない一つ一つ解説していこう。

「まず第一に俺はロリコンじゃないからな」
「あっ」

 何かに気付いたような声を上げる師匠、まずそこから理解していなかったのか?

「それにクーデリアさんはぐちぐちうるさいし」
「あ、あのアカネ君?」
「それに俺はロリコンじゃない、大事な事だから二回言ったんだぜ? まだ犯罪者にはなりたくないからな……?」
「…………」

 師匠が無言で俺に向けて指を向けていた。いや、俺の背後に?

「うん?」
「うふふ……」
「Oh」

 そこには笑顔で仁王立ちするクーデリアさんの姿が、俺はまだ死にたくない。

「奇遇ね。私もあんたみたいなガキ、欠片も興味ないわ、欠片もね」

 笑顔で大事な事を言うクーデリアさん、今謝れば許してくれる可能性がミドリムシくらいは有ると思いたい。

「反省してまーす」
「ぶちっ」

 クーデリアさんの前ではふざけずにはいられないっ!
 その行為が例えどれほどこの身を削る行為であったとしても!
 大丈夫! ちょっと怒られるだけさ!

 怒られるだけさ!

 怒られるだけさ……

 …………

 ……








 翌日

「今からギルドに入るが、今日は真面目にやるからな!」
「ぷに」

 あの後ギルドまで連れてかれて仕事しながらお説教された。
 外から見えないようにカウンターの中で永遠と正座をさせられた。

「正座って言われたときにおとめ座って答えたのも死因の一つだな」
「ぷに……」

 ぷにも流石に引いている、あの時はもう自暴自棄になってた。

「というわけで、オープン」
「ぷに」

 相変わらず無駄にでかい扉を開いて俺はギルドへ入った。
 そしていつも通りカウンターに歩んで行くと。

「あら?」
「ぷに?」

 カウンターにはクーデリアさんがいない、依頼品を持って来ただけだなのでそれだけならいいのだが。

「フィリーちゃんもいないとは、まったく誰か来たらどうするんだ」
「ぷに〜」

 仕方ないので俺はカウンターを乗り越え、いつもフィリーちゃんがやっているように自分の依頼品を納め、書類をまとめた。

「うむうむ、冒険者と錬金術士やめても働けるな」
「ぷ、ぷに……」

 ぷにが何やら不穏な声を上げている。
 ここまでは許されるラインだと俺の長年の勘が告げている。

「あ、依頼いいですか?」

 とっとと帰ろうと思ったところで、冒険者と思われる方が依頼の一覧を見せてくれと頼んできた。

「ういうい」

 俺はカウンターの下からさらりと討伐依頼のファイルをとりだして手渡した。
 そして依頼を受け付け、そして次の人、そしてまた次の人、そして次の人。

 次

 次

 次

「終わりが見えない」

 そして一番怖いのが。

「ぷ、ぷにに……」
「ああ……」

 クーデリアさんが帰って来たと思えば、俺に一瞥くれただけでいつもの定位置に戻って行った。
 そして普通に仕事をこなしている。
 怖い。

「よ、よし、人もいなくなった。帰ろう、何かわからないけど帰ろう」
「ぷに!」

 いそいそとクーデリアさんに背を向け、カウンターに出入り口に向かったところで……。

「あら、まだ仕事は終わってないわよ?」
「へ?」

 恐る恐る首を後ろに持っていくと、なんとそこには不敵な笑みを浮かべたクーデリアさんが。

「受付の仕事はもちろん、倉庫の資料も整理してもらおうかしら」
「あ……あいあいさー」

 昨日の一件+後ろめたい気持ちにより俺は断ることができなかった。
 タダ働きか、100コールくらいお駄賃くれないかな。







 働き続けること数時間、俺は休憩を入れてギルドの資料室に来ていた。
 腕に山の様に段ボールを抱えてだ。

「これを全部か……」
「ぷに〜」

 そりゃ俺でさえけっこうな量の依頼受けてるんだから、書類とかも溜まるよな。
 そこに助っ人のアカネ君は力自慢と言う事でおはちが回って来た訳だ。
 棚は一番上以外は手が届きそうなので、踏み台を使う手間はなくて済みそうだ。

「ぷには休んでな、ここは俺が!」
「ぷに〜」

 当然だろと言われました。






 一冊一冊とファイルを片づけていき、よし後一冊というところで。

「これは種別的に……一番上のところだな」
「ぷに」

 その他カテゴリが棚の最上段にある、これはなんかの嫌がらせかと。

「探しても踏み台がないし、ここはぷにがジャンプしてやるしか」
「ぷにぷに!」
「確かに失敗して散らかしたらなあ」

 十中八九叱咤は免れないだろう。

「仕方ない、ちょっと探してくる」
「ぷに」

 うすら寒い資料室を後にして、俺は廊下へと出るとそこにちょうどいい人が通りがかった。

「あら、逃げたしてないのね。感心感心」
「クーデリアさん、ちょっとこちらへ」

 珍しく褒めてくれたクーデリアさんの手を取り、俺は資料室に戻った。

「どうしたのよ? 何かあったのかしら?」
「はいこれ持ってください」

 段ボールから最後の一冊のファイルを取り出してクーデリアさんの手に。
 そしてそのまま脇に手を入れて。

「ああ、これなら棚の一番上って――――んなっ!?」

 ひょいと持ち上げて、腕を伸ばして目的の棚の前に、ちょうどクーデリアさんが通りがかってくれて助かった。

「意外に軽い。まあ、これでミッションコンプリートと言う訳で……」
「死ねっ!!」
「にゃ!?」

 体をこちらに反らせたクーデリアさんは、俺の額目がけでファイルの角を振り下ろした。
 文字通り火花が散り蹲る、なんて事をするんだこの人は。

「このアホ! 二日続けて人を馬鹿にして! とっとと帰りなさい!」
「――――」

 別にバカにしてないですよ、と言いたかったが痛みのせいで言葉にならなかった。
 遠ざかるクーデリアさんの足音、今回ばかりは本当に他意はなかったんだが……。








 その日からクーデリアさんの態度が変わった。
 話しかけても事務的な対応しかとらないし、街で会っても無視される。

 師匠に話してみると、まず俺が怒られしっかり謝りなさいと言われた。
 しかし謝ってみるも無視され、日を置くしかないと、依頼もアランヤ村で受けて、そのまま一ヵ月二ヶ月とずるずる引きずり……。

 あの日から三ヶ月後、昼のサンライズ食堂で俺は一人飲んでいた。

「くっ、そろそろ行くべきなのか、いやまだ怒ってるかもしれない! いつ行くべきか!」
「知らねえよ、ったく昼間からこいつは……」
「今でしょ!」
「…………」

 イクセルさんが眉間に手を当てて俯いた、疲れているのだろうか。

「はー、今に冷静になって思い返すと、一応女性なんだし、小さいの気にしてるし、持ち上げたのはいけなかったかなーと思ってるんですよ」
「ああ、そうか、ちなみにその話は三回目だ」
「でも毎日謝っても無視されて、日を置こうと思ったものの、さらに会いづらくなって三ヶ月ですよ」

 よし行こうと思い立つものの、扉の前まで来て、やっぱり明日にしようとを繰り返してるうちに九十日。

「今日は酒の力で勢いづけて行く作戦ですよ」
「そうか、それなら早く行ってくれ」
「でもまた無視されると思うと……」

 たぶん気丈にふるまった後、宿屋に帰って泣く。

「…………」

 この人今小声でめんどくせえって呟いた。
 いいさいいさ、どうせ俺なんて誰からも必要とされてないんだ。

 踏ん切りが付かず次の一杯に突入するとなった時、店の扉が大きく開かれた。

「ああ、アカネさん! 良かったここにいたんですね!」
「うん? フィリーちゃん?」

 この子の顔を見るのも久しぶりだな。

「アカネさん、早くクーデリア先輩と仲直りしてくださいよ〜、わたしにまでとばっちりがくるんですから」
「とばっちり?」
「そうなんですよ、なんかイライラしてて仕事中はずっと隣にいるから怖くて怖くて……」

 意外だな、アレか、最近俺が来ないからストレス解消ができないとかそういうことか。

「俺だって謝ってるけど無視されてなあ」
「きっともう許してくれますから!」
「そ、そうかなあ」

 そう言われると行ける気がするが、怖いからもう一杯だけ飲もう。
 思いっきり一気飲みでビールを腹に入れ、そして……。

「やっぱり怖いからもうちょっと酔って行こう」
「アカネさん……」

 フィリーちゃんの落胆した声が耳に痛かった。







 そして日も落ちたころ。

「よっしゃー! 行ってくらあな!」

 エネルギー充填率百パーセントになった。

「お前途中から水で酔い出したな」
「はい? 何か言いました!?」

 声が小さくて聞き取れなかったぜ!

「何でもないぜ? おら早く行けって」
「はーい!」

 イクセルさんに優しく見送られ、俺は夜の街へと繰り出した。
 ギルドへの道を歩き……ってギルドってこっちの道だったか?
 右に曲がって、真っすぐ行って、右左?

 …………

 ……


「俺は街の中、短い一生を遂げるんだな……」

 寒さがジャージを突き破ってダイレクトに伝わる。
 道も分からず、ただただ塀を手に当てて伝っていく。

「クーデリアさん、最後に謝りたかったぜ」
「ああ、そう」
「にゃ!?」

 聞きなれたその声に反応して瞬間的に振り返ると、白い目でクーデリアさんが俺の事を見ていた。
 しかし恰好はいつもの制服ではなく、黒い上着に白いふわふわしたスカートのワンピースだった。一言で言うとフリルがうざったいほど付いてる。
 髪も降ろしており、後ろで小さく青いリボンで結ばれている。

「勝手に人の家の周りで迷子にならないでくれるかしら」
「へ? クーデリアさんの家?」

 永遠に続いていると思った塀はじつはクーデリアさんの家のモノだったとは、運命的な物を感じる。

「窓から見るとあんたが永遠と人の家を回っててねえ、何してたのよ」
「いや、迷子になったから右手の法則にしたがって動いてたんですよ」

 有名な右手を付きながら進めば迷路から出られると言うアレだ。
 左手だったかもしれないが、まあ同じだろう。

「それで右手を付いて家の周りをまわってたと」
「…………」

 クーデリアさんに会った驚きで酔いが冷めたが、今になって思うとアホな事をしていた。
 そりゃ永遠に続いてるわけだよ。途中の門のところで気づいてくれよ。

「は! そ、そうだクーデリアさん、あのですね……」

 何から言えば良いんだ。とにかく謝罪だ謝罪の言葉を……。

「はあ、とりあえず家にあがりなさい」
「え、あ、は、はい」








 ……でかい、玄関からでかいが、入ったところでまたでかい。
 メイドさんとかも歩いてるし、すっごいな。

「クーデリアさんってちゃんと貴族だったんですね」
「まあ一応ね」

 あまり興味なさげに言い放ったクーデリアさんはてくてくとすぐに歩きだした。
 俺は内装に目を取られながらもしっかりと付いて行った。

 そして食事をとると思われる所に着いた。

「テーブルは豪華だけど……意外と普通ですね」

 椅子が数個に、後は部屋にあるものは暖炉が付いてるくらいのモノだった。
 いや一つ一つの家具が十分に豪華なんですけどね。

「一体何を想像してたのよ」
「いや、こう、長いテーブルに白いテーブルクロスがかかってるみたいな」

 明らかに実用性を無視したようなあのテーブルが見れるのかとちょっとワクワクしていたのは内緒だ。

「大体何考えてるかわかるけど、まあとりあえず座りなさい」
「そ、それじゃあ失礼して」

 クーデリアさんの座った対面に恐る恐る座る、お酒パワーどこへいったか、お酒パワー。
 いや、そもそも俺は本当に酒を飲んでたのか? なんか気分が妙にすっきりしてるような……。

「とりあえず、ほら飲みなさいよ」

 テーブルに置いてあったグラスに赤いワインが注がれた。

「なんか妙に優しくないですか?」
「失礼ね」

 いや絶対におかしい、もしかして家だと大人しいタイプの人なのかもしれない。

「ちょっと私も大人気ないところがあったと思っただけよ」
「え?」

 俺が聞き返そうとすると、クーデリアさんはグラスを一気に傾けた。

「いや、ワインってそうやって飲むものじゃない様な……」
「いいから、ほら、あんたも何か言いたい事があったんじゃないの?」

 もはや既に若干顔が赤いぞこの人、それにしても言いたい事か。

「…………っ」

 俺もワインを一気にあおり、酔いにまた火をつけ口から言いたい事を垂れ流した。

「謝る分はもう謝りました。明日からは普通にギルドに行きますから」
「……そこは嘘でも謝っておきなさいよ」

 じっと目を見つめ言葉を発すると、クーデリアさんはジトっとした目でそう言い返してきた。

「まったくあんたはそんなんだからガキなのよ」
「クーデリアさんだって、こんなもん飲んでないで、牛乳とかですねえ」
「…………」
「…………」

 互いの視線の間で火花が散った気がした。

「…………っ」

 まず俺が一杯飲み干した。

「…………っ」

 次にクーデリアさんが。

 静かな闘いがここに始まってしまった。

「こないだの話の続きだけどねえ、私はあんたみたいなガキよりも年上が良いのよ」
「俺は年上なら外見大人の方が良いですね」
「…………」
「…………」

 また火花が散った。
 この不毛な闘いはいつになったら終わるんだ。



………………
…………
……


「勝った。しかしあまりにも空しい勝利だ」
「ううん……」

 クーデリアさんはテーブルに突っ伏して寝てしまった。
 大人かコレ?

「クーデリアさん風邪ひきますよ?」
「……うっさい」

 揺すってみるも振り払われてしまった。
 ここで華麗に執事さんとかが現れてくれればいいんだがそんなこともなく。

「……運んであげたいが」

 また怒られそうだしなあ。

「クーデリアさん、運んでも良いでしょうか」
「…………」

 静かに寝息を立てていらっしゃる、少なくとも起きることはなさそうだ。

「失礼しますよっと」

 静かに椅子を引いて、しゃがんで足を持って背中に手を当て、ゆっくりと持ち上げた。
 まさか人生の中でお姫様抱っこを実現する日が来るとは。
 起きたら殺されるな、比喩なしに。

「しかしこうして見ると」
「……すー」

 あどけない寝顔が可愛い。

「はっ!?」

 これが噂に聞く黙ってたら可愛いって奴か、髪をおろしてるギャップも相まって余計に露骨に素敵に可愛いな。
 パパっと送り届けてしまおう。

「ううん、アホアカネが……」
「夢でも罵倒されるのか俺」

 思わず苦笑いをしてしまった。
 とりあえず仲直りはできた……と思うので、心に若干ゆとりができたようだ。

「あとはクーデリアさんの部屋を見つけるクエストを――――っ!?」
「…………」

 気づいたら目の前に黒服グラサンの人が立っていた、執事というよりも、893の人っぽい印象です。

「えっと……よろしくお願いします?」
「…………」

 無言だ。無言でクーデリアさんを受け取り、無言で去って行った。
 これが金持ちの世界か。

「…………帰るか!」

 誰もいない部屋に空しく声が響いた。



















「クーデリアさん、今日の俺自然に10センチ身長が高く見えるシークレットブーツ履いてるんですけど、どうですか?」
「……死にたい様ね」

 今日もギルドに俺の悲鳴が響き渡る。たぶんこれからもずっと続くだろう。
 この関係が変わる日が来るのかもしれないし、来ないかもしれない。
 一つ変わった事があるとすれば。

「ところでクーデリアさん、髪おろしてみませんか?」
「あんた、毎日それ聞いてくるのやめなさいよ」

 不本意ながらギャップの魅力に気付いてしまったくらいだ。




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